箕輪町は中箕輪で完全無農薬・無化学肥料でハーブや西洋野菜、食用花(エディブル・フラワー)を育てる「ナチュラルセンス」は長谷川さんご夫婦が営む農園だ。
もともと飼料作物を専攻していた長谷川さんが初めて「ハーブ」の概念に出会ったのは、大学での就職活動の頃。偶然雑誌を眺めていたら飛び込んできた「香草」という文字に興味を持ち、そのまま千葉のハーブ農園に就職。
その後、静岡や千葉のハーブ園での勤務やハーブの苗を育てる仕事など、ハーブに関わる仕事を続け、最初は長野県茅野市で就農。現在の箕輪町には知り合いのつてがあり、22年前に越してきた。
「今はもうある程度ローズマリーやタイム、バジルなど、みなさんも馴染みがありますが、昔は全く知られていなかったので、料理番組でもただ『ハーブ』と記載されていたくらい認知度が低かったんですよ」。
ハーブはどうしても西洋のもの、というイメージがあるが、そもそものハーブの定義は「生活に役立つ香りのあるもの」。日本にある大葉や、よもぎ、ニラなども立派なハーブだ。
「気がつかないだけで、身近な生活の中に、少しずつでも入ってるんです。シャンプーや芳香剤なんてみんなそうですよね」。確かに、身の回りにはハーブを使っている商品は多く存在しており、現に私たちは毎日ハーブに触れているとも言える。
もっとハーブを生活の中に盛り込んでもらおうと、長谷川さんはイベントにも多く出展し、より多くの人にハーブを知ってもらうための活動もしている。
ハーブの定義の中の「香りがあること」から、栽培においても、やはり香りが命だ。
「やっぱり、香り、ということはすごく私たちはこだわっています。やっぱり香りがないものは私たちはハーブって言えないんじゃないかなあと思って。ですから、なるべく自然に近い状態で、野生に近い状態にしてあげています」。
野生に近い状態と言うのは、ハーブが本来自然の中で育つ状況となるべく近い姿を目指すということだ。化学肥料を入れたり農薬をかけたりすると、綺麗なものは育つかもしれないがどうしても香りが薄くなってしまう。
冬の期間も、ビニールハウスで暖房を効かせればより多く収穫ができるかもしれないが、より自然に近い状態を、と考えれば無理にハーブを育てることはしない。
「自然の温度で、冬はやっぱり冬の姿っていうのがあるんで。ミントであれば、本当にもう上はなくなって、根っこだけが、冬場ずっと張ってじっとしてまた5月とか6月くらいになると、芽吹いてきて、ハーブが出て来るんです。なるべく自然に逆らわないようにしたらどうかなと思って」。
この地に移住してから22年、一切農薬や肥料を入れず自然栽培にこだわってきた長谷川さんの畑では、もう虫も病気もあまり出ないそうだ。ハーブが育つのに適した土壌があり、生態系がある。ここでは、すでに自然の循環が起きていて、人間もその一部なのだ。
「本当にむしたちに任してるような。私たちはもうただその環境を作るだけで。水が足りなくなれば少し水を多く入れてあげたりとかそういうことだけで。あとは、もう植物が自分で、土の力で、大きくなってるというだけで。そんなに手をかけなくても、もうこんな感じでできるようになりました」。
意外にも長谷川さんがやまびこテラスさんに最初に出会ったのは、 2020年に入ってからだと言う。最初のコラボレーションは、長谷川さんたちのハーブで作ったハーブティーの提供。
今回やまびこテラスさんで味わえるのは長谷川さんのハーブや食用花を取り入れたサラダ。季節柄、花の種類は限られるが、来年の春には一斉に芽吹いた花の色もきれいで、目にも楽しいサラダとなるはずだ。
ハーブを使った塩や砂糖、お茶など、様々な商品の開発を行ってきた長谷川さん。今後はハーブにスパイスを組み合わせたものも開発していくとのことで、ハーブの用途や応用に関する探求は今後も収まることを知らない。それだけ、ハーブは奥深く、そして生活に彩りを添えるものなのだろう。
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