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  • 執筆者の写真yamabiko echo

箕輪の自然・人と共に育む牛

更新日:2020年11月2日


長野県・箕輪町で、牛の肥育(*ひいく = 食用牛の飼育)を行うのは、YOU YOUファームの柴 勇一郎さんだ。

もともと実家が酪農農家だったという柴さん。

酪農の仕事を手伝い始めたのは小学校3年生の頃。

酪農家は朝と晩に必ず、搾乳をしなければならない。

その大変さを知っていたこともあり、学生時代には陸上選手を目指し、部活動に打ち込んでいた。

それでも、家業を継ごうと決意したのは、高校二年生の時に人工授精や受精卵移植の分野での恩師との出会いや、経営に興味があったからだという。


農業学校や飼料研究所での勤務を経て、両親の後継者という形で21歳で、就農。

就農当時の経営は和牛の繁殖業と酪農業の両輪だったが、ちょうど「口蹄疫」の前後の時期だったこともあり、国内の需要も減るなか、経営は決して楽ではなかった。

さらに、酪農では牛を飼うだけで相当のスペースを要する。


転換期となったのは25歳の時。

借り入れから南箕輪の牛舎を購入し、乳牛も含めて、両親の事業を全て引き継ぐこととなる。

新たな酪農の形を模索し、地元のすずらん乳業とのヨーグルトの開発や、カフェ営業など、6次産業化など精力的に取り組んだ。

それでも、ずっと持ち続けていたのは和牛の肥育の夢だった。


「やっぱりいつかはお肉を商品にしたいなって思いは、ずっとあったんです」


その思いを実現させるきっかけとなったのは、やまびこテラス代表の「和牛を出したい」というリクエストだった。

しかし、元来柴さんがやってきたのは和牛の仔牛の生産。

地域で和牛を育てるためには、単価が高くなってしまうことも知っていたため、最初は継続できるかどうか自信がなかったという。

それでも、近年、仔牛を産み育てた「親牛」の食用牛としての評価が高くなってきたことを受けて、やまびこテラスに親牛を一頭買いしてもらう条件で、柴さんの和牛肥育が始まった。


「今、『単価が安くて食べられる一番いい肉質の和牛は親牛だ』と言われるくらい、親牛の評価が上がっています。また、オリンピックに向けて日本が世界から注目されている中で、和食や日本文化ならではのおもてなしとしても和牛自体がまた見直されるような追い風となっていて。やまびこテラスさんと『一緒に広げて行けたら』と話しています」。


現在、YOU YOUファームで育てられた牛はほぼ直接やまびこテラスへ届けられ、カット加工もやまびこテラスで行うという産地直送が可能になっている。



上伊那地域は、高い山に囲まれた広い平野が特徴で、水も豊富な肥沃な地だ。

親牛の肥育はほとんど例がないものの、おそらく全国でもトップクラスで自給飼料が豊富な地域。

昔から酪農が栄えてきたが、現在は高齢化も進み、空き家となっている牧場もあるらしい。肉牛は乳牛ほどは大きくならないため、一頭あたりに十分な広さの空間を確保できる。

広々としたスペースのなかで育てられることで、牛へのストレスも少ない。

柴さんの牧場では、牛たちが雄大な自然のなかでのびのびと放牧されている。


意識するのは「健康メタボ」。

通常は乾燥した牧草を他から取り寄せて与えるところもあるが、ここでは100%地元箕輪で取れた牧草を与える。

ビタミンが豊富なため、脂肪の黄色味が増すというが、この点もやまびこテラスとの相互理解の上で、こだわりを持っているところ。

通常は脂肪の色なども白に近いほど評価が上がるが、見た目よりも牛たちが健康に育つことに重点をおく。

その他の飼料もなるべく国内産のものをブレンドしながら、最適なメニューを牛に食べさせている。



現在、柴さんが肥育した牛は「天龍牛」というブランドとして売り出している。

やまびこテラス店長の山田さん曰く、「こんな経産牛は見たことないと言われるくらいいいお肉」。

サシが綺麗に入り、脂肪も胸焼けすることなく身体にすっと入ってくるという。

味はもちろんのこと、目の前に広がる箕輪の大自然を感じて食べて欲しい。

地域で作って、地域の飲食店が料理したお肉。

地元の人がまず「美味しい」と言って選んでくれるお肉になっていくということが、少しずつ需要を生んでブランドとなり、世界からも注目される和牛の産地を作る。


牛は、柴さんの中で大事なパートナーだが、牛だけでなく、そこには地域に広がる自然や人が欠かせない。

箕輪の地で丹精込めて育てられたお肉を、ぜひたくさんの人に食べていただきたい。


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